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連載 第2回 K子ちゃんとわたし|寝坊→受験票×→受験場×→

しかし、偶然の再会・・・。

しかもそれは、帰国後数ヵ月でお互いを待ち受けていた大学入試の会場で。
その日は珍しく東京に大雪が降った。
朝起きると一面銀世界。雪で家の窓が覆われるほどに。

それで・・・というわけではなかったが、私は寝坊してしまった。
受験票をつかみ、あわてて外に出るも一面雪で、不慣れな東京の地理は
一層迷路のように思えた。
最寄り駅から地下鉄に乗り、空席に滑り込み、ほっと一息、
手にした受験票を確認すると、そこにはW大学という文字が・・・。
私はK大学を受験するために三田駅に向かっているというのに・・・。

万事休すに思えたが、そこは気を取り直し、まずは試験会場に急ぐ。
三田駅に着いた後も地上に出ると、一面雪でどこに向かって
走ればいいのか全くわからない。
受験生らしき男子が血相変えて走っていたので、
「K大学に向かっているのか」と聞く。
そうだというので、彼の後を追った。
しかし、「大雪のため開始時刻が延期になっています」
といったアナウンスが聞こえていたような気がする。

“受験票再交付場所”という立て看板を見つけ、
「私と同じようなドジな人が他にもいるもんだわ」
などとお気楽に思いながら窓口の人に自分の名前を告げた。
窓口の人は何度も台帳をめくりながら「お名前がないのですが・・・」という。

「えっ!」

後ろでは学生部のお兄さんたちが
「本日はK大学法学部法律学科の受験日です」と拡声器で叫んでいる。

「法律学科?政治学科ではないのですか?」
「政治学科は三田ではなく、日吉です」
「・・・・。日吉ってどこですか?」

数分後、私は学生部のお兄さん、お姉さんにタクシーを拾ってもらい、
行ったこともない広尾という駅に向かっていた。

「いい?広尾に着いたら、日比谷線の桜木町行きに乗るのよ。間違っても反対方向に乗らないでね」
と念を押され、日吉に向かって電車に乗った。
まさか、寝坊した挙句、受験票を間違え、受験場まで間違えるとは・・・。
今度こそ万事休すではないか・・・。
とも思ったが、何も知らず、合格を祈っている田舎の両親のことを考えると、
ここでひるんではいられなかった。

まずは日吉とやらに行ってみよう、と気を取り直し、
電車の窓からひらひらと降り続ける雪を眺めていた。

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