母親たちの涙と、修行僧木村真紀。
先日、横浜市青葉区の幼稚園関係の集会に木村真紀が講師として招かれ、コンサートを行ってきた。100名近い方が集まってくださった。中でも、子育て真っ只中と思われる30代のお母さんたちが多かった。
コンサートの始まりは定番の「風」。ここで既に号泣者がちらほら。
「小舟」「涙」と3曲続けて、子育てソングを歌うと、1列目、2列目に座っていたお母さんたちは次々とハンカチを取り出して、洟をすすりだした・・・。
私は号泣する母たちを見て、うーっと目頭が熱くなる。大体いつも涙する人の姿を見て、もらい泣きをする。「つらいんだな。みんな」。
この日は、何かふっきっれたような、真紀節がいつにも増して絶好調。「私なんて偉そうなことをいえるような母じゃないんです。うちは3人とも次から次へといろいろ問題あって・・・。今日も一発かまして、家を出てきました・・・」と赤裸々に本音を交える真紀トークに30代の若き母達はぐいぐいぐいっと引き寄せられていった。
いつも子ども向けコンサートでやる、「きょだいなきょだいな」という手作りの大型絵本の歌がたりを間に入れて、後半は「夫と妻」の歌を中心に歌う。
子どもを間にした夫婦関係の真髄を突く「愛ってなあに」はイタイ歌だ。聞いていてつらくなる・・・人は多いかもしれない。ちょっと場内がシーンと静まり返った気がした。
子育てがつらい、と感じている人の多くは、そう、たいていの場合、「夫婦」の関係が危ういケースが多い。「孤育て」になっていることが多く、自分だけの胸のうちにいっぱい何かを抱えていて誰にも言えずにいる場合が多い。
もろもろ、いまだ大変なことが続く真紀さんは「まったく修行僧じゃないんだから・・・もう、なんでこう次から次へと大変なことが続くのよ、と思ってたんですけどね。でもある日、そうだ、修行僧じゃないと思ってるから、つらいんであって、自分は修行僧だと思えばいいんだ。そうだ、自分は修行僧だと悟ったんです。そしたら、なんかパーッと目の前が開けてきました。うん、私は修行僧だと」
修行僧だと、連呼する木村真紀と、最近髪を切りすぎて自称「刈り上げ板前」だった木村真紀が、私の頭の中で妙な合致をして、噴き出してしまった。会場も爆笑の渦で、ちょっとクールに聞いていた人たちも、「修行僧だ」と連呼する木村真紀に、心ほどかずにはいられなかったようで、会場の木村真紀を包む空気がさらにやわらかくなったような気がした。
この日は、真紀さんのCDもよく売れた。私も東京からえっほら重たいCDを抱えて行った甲斐があった。目を真っ赤にした母達が次から次へとCDを手にして、真紀さんのサイン待ちの列に並んでくれた。「今、つらい時期なんです・・・」と今にも語りだしたそうな人もちらほら。
コンサート終了後、幼稚園の園長先生数人の方とゆっくり話すことが出来た。保育者、教育者の方々にとっても大変な時代なのだとつくづく感じた。ある園長先生が言っていた「今はお母さんたちが、子どもではなく、私を見て。私をほめて。私の話を聞いて、という時代です」という言葉が印象的だった。
誰もが「自己肯定感」を強く求めて彷徨う時代・・・なのだね。
うん、それにしても、修行僧木村真紀・・・には笑わされたなあ。修行僧よ、一緒にがんばろうね!