木村真紀との出会い

それはあまりに唐突だったかもしれない。

インプレオがシンガーソングライターのマネージメントを始めるなんて。
しかも「インプレオ所属にします」と宣言してしまったのだから。 社員だって「えっ?」と思ったに違いない。 色んなことが唐突に始まることに慣れっこになっているとしてもね。

木村真紀との出会い

木村真紀 オフィシャルサイト
http://www.kimuramaki.com/

2009年6月の小雨降る日、アートフォーラムあざみ野で行われた「ほっと一息コンサート」で初めて、真紀さんの歌を聴いた。 友人の「絶対来て!」という強いリクエストに導かれながら。 平日の午前中から始まるコンサート・・・珍しいな、と思いながら客席を見渡す。 ほとんどが子育て世代の女性たち。年配の夫婦がぽつぽつ。男性の姿はまばら。

真紀さんのピアノ弾き語りをベースに進行、バイオリン、ギター、パーカッションのバンド構成が素敵な音を奏でながらステージを盛り上げる。 飾らない人柄そのままの真紀さんの日常を語る素朴なトークに共感・・・、思わず頬がゆるむ。そして、透明感のある優しい歌声がはこぶ、ストレートな歌詞。

「弱さだけを 唯一の武器に すがりついてくる君 痛い 痛いよ私も 先に 涙 溢れた その時 小さな 白い手が そっと頬をぬぐう ありがと うれしいよ その笑顔が 何よりの 贈りもの」(「小さな贈りもの」より抜粋)

「私よ もう わかってほしいとか ねぎらいの言葉とか そんなものを欲しがって 取り乱してはいけない 真夏のこの太陽みたいに おしげもなく 自分の すべてを注ぎつくしてしまえば いいんだ いいんだ」(「愛ってなあに」より抜粋)

照明が落とされた会場で少しずつ聞こえるすすり泣く声。周りを見渡すと、ハンカチを手に涙を拭う人、鼻を押える人、メガネをしきりに持ち上げる人・・・。みんな泣いてるんだ。 キョロキョロしているそんな私の涙腺も十分にゆるゆるだ。

ああ、会場の今のこの情景。
会場に溢れた思い、溢れた涙。

真紀さんの歌声に溶かされた「頑ななるもの」がとけてしまったかのような。真紀さんの歌声と、それに共振して涙する母たちの姿と、このままの情景を霞ヶ関や丸の内に持っていって見せたいな、官僚や企業戦士たちに見て欲しいな。そしたら、もうちょっと日本は変わるかな・・・と。

つまりね、そういうことなんだよ。こどもを育てていくってことは、家族を育むってことはね。
私の中にも色んな思いが溢れた。

それから暫くして、暑い夏の日、真紀さんを紹介してくれた友人と真紀さん本人の訪問を受けた。 もう少し活動の幅を広げていきたいこと、ラストチャンスの時期に来ていること。もっともっと何かできるんじゃないかと思っていること。 そして友人は「真紀さんの力になって欲しい」という言葉と美味しい生ドラ焼きを置き土産に帰っていった。

しかし、しかし、音楽業界って?素人が手を出すもんじゃないよね・・・。いったいインプレオという会社に何が出来るんだろう。またいつもの定石、「出来ることから始めよう」でいいんだろうか、と自問自答を重ねること数ヶ月。やろうとしていることが、あまりに唐突過ぎて、社員にも相談できなかったくらいだ。しかし、自分の心のどこかで、何ができるかわからないけど、まだ未知の分野に飛び込む勇気があるうちはやってみるべき、という思いが日増しに強くなっていたのも確か。人生の折り返し地点を過ぎて、下り坂をゆっくり下り始めているのは、真紀さんだけはなく、私だってそうなのだから。

11月の半ば、アートフォーラムでの2回目のコンサートがあった。今度はバイオリンとピアノだけのシンプルな構成。オリジナル曲を中心にして、一部に強烈なファンがいるというゲームソング「ANUBIS」や「The Rose」などのカバー曲も入った構成はなかなか魅力的だった。そして、前回同様、「頑ななる」何かがとけだして、会場には涙が溢れていたけどね・・・。

コンサート終了後、齡50歳になられた、知り合いの商社マンが少しばかり興奮した面持ちで、真紀さんを出口で待ち構えていた。

「いやー、すごくよかった。もうほんと、やばかったね。涙腺やばかったよ」
「これはね、この世界はね、広めたいよ。もっとみんなに聴いて欲しいね」
「男でもね、共感する人多いよ、きっと」

彼は初めて木村真紀の音楽に接し、ひと聴き惚れしたのだという。
そして、その晩早速私にこんなメールをくれた。

木村真紀さんライブよかったです。「ごくありふれた日常の風景」、「ユーモア」、「人生に対する真摯な姿勢」といった彼女の全人格的なものが心に訴えてくるとても温かいライブでした。 私も、もっと真紀さんの世界を広げてゆきたいと思います。それには、成子さんが言うように、男連中、特に中年のオジサン連中に ”真紀ワールド” を浸透させてゆく必要があるのでしょうね。どういう切り口で ”真紀ワールド” をオジサン連中に浸透させるかがポイントですね。
昨日のライブで、「子育て」、「親子」、「家族」、「夫婦」といったテーマが”真紀ワールド” の真髄であると感じました。私個人はこれらの ”真紀ワールド” のテーマがすんなりと心に浸透し、大変感動しました。
しかし、他のオジサン連中はどうでしょう。自分の周りにいるオジサン連中を見てると、おそらく、みんな、潜在的にはこれらのテーマに感動する感性を持っていると思います。 でも、それらは多分心の深いところにあると思うので、そこに辿りつけるかどうかですね。 気恥ずかしさから拒否反応を示すオジサンもいるかも知れません(笑)。

そして、私はこう応えた。

今後、真紀さんのマネージメントを弊社事業の一つとして、本格的にやっていくか否か、一人迷い迷いの日々でしたので、貴殿が素直に感動している姿に、何か背中を押されたような気もしました。
真紀さんの歌と言葉には、日常の一つ一つを何もおろそかにせず、きちんと向き合って生きている人のゆるぎない強さと真実があると思います。 ともすれば、言い訳ばかり・・・で、様々に起こり得る様々な事象のみならず、様々に沸き起こる自分の中の様々な感情をも、見てみぬ振りをして、やり過ごしてしまいがちな忙しい私たち。どこかに何かを置き忘れてきたような気分をずっと引きずりながら。
その置き忘れてきた何かを、ふっと気づかせてくれるのが彼女の歌であり、言葉であるのかな、とも思います。突然やってくる感動、みたいな。だってどこかに自分が置き忘れていたものを、ふっと目の前に差し出してくれるのですからね。
先が読めず、閉塞感が強い今。バブルを経験した世代には余計にはつらい時代ですね。バブルに浮かれていた頃に置き忘れてきたものがいっぱいあって、なんだか今そのしっぺ返しをくらっているような。
気づいたら、子供の手はすっかり離れ、おまけに妻の心もすっかり離れ。頼りにしていた上司は失速気味、あてにしていた企業年金さえ危うい始末。俺の会社人生の結末も見えてきたなあ、と思うこのごろ。もうちょっと、ちゃんと色んなものに向き合って生きてくればよかったかな、と思う人々、周囲に多くないですか・・・・。そんな男性諸氏にもお届けしたいなあ、彼女のステージを。

私の辛らつな言葉が並ぶメールに彼は「同感です」と返信してくれた。

こうして、インプレオは「ヴォーカル/作詞/作曲 木村真紀」 のマネージメントを敢行することにあいなりました。 「がんばれ、ニッポン。がんばれ、みんな」そんな思いをこめて、この事業を進めていきたいなと思っております。

何卒何卒、ご支援ご鞭撻を賜りますよう、よろしくよろしくお願い申し上げます。

2009年12月吉日
株式会社インプレオ
代表取締役 かとうせいこ

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